初恋も二度目なら
長峰さんに嫌われたくないと思った私は、彼の言うことは何でも聞いた。
でも長峰さんは、そんな私の思いが負担になっていたのだろう。

「・・・最初はそんな思わなかったが、最近なー・・・あいつのこと、心身ともに重く感じる」
「あ、そー。じゃ、結婚は?」
「全然その気ない。潮時かもな」
「ぐわ。きたこれ。ま、おまえも・・・」

長峰さんと同僚の会話を偶然盗み聞きしてしまった私は、二人に気づかれないよう、ショックを隠しながらどうにかその場を抜け出した。
泣くのは後、と言い聞かせて。

その日の晩、私は長峰さんに電話で「別れてください」と言った。
翌日の朝、彼は私にマンションの鍵をそっと返した。

・・・ホントだ。
社内恋愛って、別れた後が何かと・・・面倒くさい。

別れてからも、長峰さんは何か言いたそうな顔で、何度か私を見ていたような気がする。
でも私は、自分から彼に話しかけることは絶対しなかったし、極力目を合わせないように、偶然でも会わないように努力した。

それから二週間後、彼は転勤でアメリカへ行った。

たぶんアメリカ行きの辞令は、その前からおりていたはずだ。
それを私には一言も言わず、匂わせもしなかった。
もし私たちがラブラブな恋人同士だったら、彼は「俺についてこい」と言ったはず。
でもあの人は、私と結婚したいと思うどころか、別れたがっていたから・・・言えなかったんだよね。
だから彼がアメリカへ行ったことは、グッドタイミングだったのよ。

それに海外勤務をするということは、この会社ではエリートだという証でもある。
さすが長峰さん。

「お仕事がんばって、あっちで素敵な人を見つけて、結婚して・・・お幸せに。うっ、ううっ・・・」

生まれて初めて恋をした私は、その人とおつき合いすることができた。
その彼のことは、結婚したいと思うほど好きだった。愛していた。
そんな私の初恋は・・・1年2ヶ月で幕を閉じた。

でも・・・好きになった人とおつき合いできたことだけでも、実はものすごく幸運なことだったんだ。
いろいろな気持ちがないまぜになった私は、それらを洗い流すように、気がすむまで泣いた。

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