初恋も二度目なら
・・・だからこの人は、医者という職業がどれだけ大変で、その分やりがいがあると言ってるってことは、結局私には、「俺はお医者様だ!」と自慢してるだけにしか聞こえないんですが・・・。
同じ威張ってる雰囲気でも、部長はここまでひどくない・・いや、ひどいけど、部長は鼻にかけてないから、威張っていても、嫌味には聞こえないどころか、サマになって・・・だ、だから私っ!

部長のことは、もう、考えないのっ!!

「・・・それでさー、俺、つき合う彼女とは結婚したいわけ。年も年だし。家に帰って“おかえりなさい”って言ってくれる嫁さんいたらなーって思うんだ。あったかいメシが用意さされてたら最高!」
「あ、そう・・・」
「俺医者だから、稼ぎは十分ある。だから嫁さんには外で働いてもらう必要もない。何なら所得証明見せようか?」と言いながら、バッグをガサゴソとあさり出した山中さんに、「えっ!あの、山中さんって、所得証明を持ち歩いてるんですか」と私は聞いた。

「ああ。どれだけ俺が稼いでるのか相手に分からせる、手っ取り早い方法だと思うし」
「いやぁ。それは・・・私でも引きます」
「え?そう?てか・・・やっぱり?」
「ということは、過去にもしたことが・・・」

あるんだ、この人・・・。

「そんなに結婚したいという願望があるなら、合コンに参加するのもいいですけど、婚活をされた方がより良いかと・・・。婚活パーティーに来ている人たちは、結婚を前提におつき合いをしたいと思ってる方が大半ですし」
「婚活・・・。なるほどねー」と頷く山中さんに、私は少し近づくと、「実は私も、婚活サークルに入会してるんですよ」と、小声で言った。

「ホント?」
「はい」

それから、私が入会している「ハッピー婚活所」のことを山中さんに小声で教えると、山中さんはかなり乗り気で聞いてくれて、最後は「俺、そこに入ろう」と言っていた。


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