初恋も二度目なら
え?森下さんは私の前にいるから、物理的に無理なわけで。
そして森下さんも、なぜか驚いた顔してるし。

それに、このムスクの香りは・・・。

「話が盛り上がってるところ悪いが・・・」

いえ、別に盛り上がってませんけど。じゃない。
こ、この声・・・まさか!?

ていうか、やっぱり!?

私がクルッと後ろをふり向くと、ハンサムな顔に不敵な笑みを浮かべている、長峰部長の真っ黒な瞳と目が合った・・・のは、私は部長の背を知ってて、だから私がどれくらい顔を上げると、この人と目が合うのか知ってて・・・。

じゃないよ!

「ぶ、部長!?なんでここに・・・」
「こいつは俺狙いなんだ」
「は?何を言って・・・」
「行くぞ」
「え?ちょと、待って、ぶちょ・・・!」

長峰部長は、私が右手に持っていたグラスを取り上げると、すぐに通りかかったウェイターに渡した。
そして空になった私の右手には、すぐに部長の左手が繋がれて・・・。

私は部長に引っ張られるような形で、パーティー会場を後にした。


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