【超短編 03】占い師の3つの質問
【短編】占い師の3つの質問
「いいですか。私はこれからあなたに三つ質問をします。あなたに対する質問です。それを全て答えられたら、あなたに一つだけどんな事でも占って差し上げましょう」
 その占い師は駅から少し離れた住宅街にあるマンションの一室に店を構えていた。
 六畳くらいのワンルームを占い小屋に改装したその部屋は全ての窓を厚手のカーテンで外からの光を一切遮断し、唯一の明かりは彼女のテーブルにある骨董市で売られていそうなランプだけだった。全体的に薄暗い部屋はよく見てみると怪しげな人形やオブジェが並べられていて、それは占い師の館というよりも魔女の実験室(というものがあれば、の話だが)のように思えた。占い師の女性は濃い化粧とその部屋のせいで40代後半くらいに見えたが、ここを紹介してくれた人の話ではもう80を超えているということだった。彼女は濃い緑色のゆったりとした服を着ていて両手は常に水晶玉の上にあった。手だけを見るとお婆さんだということがよくわかる。
「わかりました」
 僕はわざと少し間を持って意を決したようにそう答えた。そう答えざるを得ない雰囲気がそこにはあった。
「あなたは今日、自分の家からここまで何歩で着くことができましたか?」
 名前から聞かれるものだと思っていたので、その質問の内容が自分の頭で理解するまでに少し時間がかかった。
「わかりません。数えていませんでした」
 そう答えると、占い師はにやりと笑い
「17728歩です」
と答えた。あっているかどうかわからないので僕はただ神妙に頷くしかなかった。
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