本気の恋をしようじゃないか《加筆修正版》
店の入口にも外にも美和の姿はなかった。
「あれ?美和は?」
「彼女なら気を使って先に帰ったよ」
ぶっきらぼうに恵が答える。

うううう・・・・
なんだか嫌な予感しかしない。
一体美和は恵に何を言ったんだろう。
「あ、あの……さっきの人たちはいいの?接待だったんだよね」
「いや、接待じゃない」
「え?そ、そうなんだ」
胸の奥がチクッと痛む。
すると恵君が私の頭をわしゃわしゃした。
「恵?」
顔を上げ恵くんを見上げるとさっきまでの険しい顔はそこにはなく優しい顔があった。
「今回のプロジェクトのメンバー。と言ってもでみんな他部署の人間なんだ。急遽親睦を兼ねた飲み会になったんだけど、プロジェクトリーダーの俺が欠席ってわけにもいかないだろ?かといって杏奈にいつ終わるかわからないのに待っててもらうのは申し訳ないと思って・・・だけどまさか同じ店で会うとは…」
だったら尚更、私みたいなのが彼女だって知ったら惠の評価が下がるのでは?
「おーい。またネガティブなこと考えてるだろう」
否定は出来ない。だって本当のことだもん。

年齢は大人なのに中身は全く成長していない自分が嫌になる。
「ごめん」
私が誤ると頭上から大きなため息が聞こえた。
絶対幻滅してる。
私とよりを戻したことを後悔しているんじゃないかって思ってしまう。
少し頭を冷やしてもっと物分りのいい大人の女に近づけるようになりたい。
「ちょっと頭冷やしたいから一人で帰るね。また連絡―」
するね・・・そう言おうと思ったのに言えなかった。
恵が私を抱きしめたからだ・・・
「ばーか。誰が一人で帰すかよ。杏奈が俺の何なのかちゃんと分からせないといけないからな。今夜は覚悟しとけよ」
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