オオカミくんと秘密のキス
オオカミと図書館

危険な図書室

私…

好きじゃない人とキスしちゃった…


お父様。お母様。ごめんなさい…







「わ~♡今日も沙世のお弁当美味しそうだね!」

「ありがとう!良かったら1個食べる?」

「うん!じゃあ私のおにぎりと取り替えて~」


遠足から数週間後。5月半ばになり、春の陽気も少しずつ夏に近づいていくある日の昼休み…私は春子と教室でお弁当を食べていた。

あの遠足の日以来、私は毎日モヤモヤしている…



遠足で尾神くんにキスされたあと、私は恥ずかしくてその場から走って逃げた。しかも「ごめんなさい」と謝りながら…

何を謝ってるのか自分が謎。人間はテンパってしまうと意味不明なことを言ってしまうらしい。


逃げて来たはいいけど、尾神くんを呼びに行ったのに連れて帰らないのはおかしいかなと一度立ち止まったけれど…

見つからなかったことにすればいいやと、また走り出してバーベキュー広場に戻った。


けれど私が戻ってすぐに尾神くんも戻って来たので、何も問題はなかった…

チラチラと尾神くんを見ても、何事もなかったような顔をしてたし…


あのキスは寝ぼけてただけ…?

だとしたら余計に腹立たしい…


帰りのバスは席が遠かったのでホッとしたけれど、あの日から尾神くんを意識してしまう。

ファーストキスを奪われたんだから当たり前だよね…






「美味しい♪やっぱり沙世は料理うまいよ!いつもお弁当は沙世が作ってるんでしょ?」


尾神くんのことを考えていた私は、スイッチを入れ替え春子との会話に集中する。



「う、うん!でもそのサンドイッチのパンはお母さんが作ったやつ」

「あ、そっか!沙世のお母さんパン作りが趣味なんだよね。また作ったらおすそ分けして欲しいな~」

「お母さん喜ぶよ!言っておくね」


春子に笑顔を向け、春子からもらったおにぎりを一口食べた。



尾神くんにキスされたことは春子には話していない。

春子には今まで隠し事なんかしなかったけど、今回は何故か話す気になれなかった…


タイミングを見て言おうと思ってるし、このまま無かった事にして言わないというのも考えてるが…今のところは保留。


まずは春子に話すことよりも、あのキスのことをなんとかしなきゃな。

尾神くんはどういうつもりでキスしたんだろ…?



寝ぼけてしちゃった…ってゆう理由でももう別にいいけどね。

ただ、とにかく理由を聞きたい。じゃないとずっとモヤモヤしてることになりそうだし…


けど話しかける勇気なんてないよ…

尾神くんの周りには女子がウロウロしてるし、私なんかが話しかけたら女子の反感かうよね。




「ちょっと見て。A組の奴が尾神くんに何かあげてるよ」

「家庭科で作ったお菓子じゃね?」


すると、近くの席で固まってる女子達の会話が聞こえて来た。私はなんとなく耳を傾けながら女子達と同じ方向に目を向けると…男子達に囲まれ寝ている尾神くんの横に、恥ずかしそうにしている他のクラスの数名の女子がいた。

尾神くんはクラスの男子に起こされていて、目をこすりながら女子からお菓子を受取っている。





「なにあれ…てめえの作ったお菓子なんて尾神くんに食わすなよ。胃が腐る」

「確かに~でもちゃんと受け取るなんて尾神くんてなんて優しいの…」


…ほらね。

尾神くんに話しかけるなんて無理です。
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