ド天然!? 魔女っ子の秘密【2】

ラティスタ遺跡

それからまもなくして夕刻を告げる鐘の音が聞こえてきて、あたし達はラトセーヌの泉から王城へと帰るための準備を進めた。

姫の準備を待っている間、翔太は譲二さんの元へ状況を確認するために一足先に結界の外へと向かった。他に魔物がいないか確認するためだ。

もし姫と一緒に行動しているときにチーリン並みの強さを持つ魔物と遭遇してしまったら大変だもんね。姫を護りながらあんな強い魔物と戦うなんて…姫を護りきれるかどうか分からない。

「お待たせいたしましたわ」

しばらくすると姫と晴人さんがやってきて、けれどすぐに翔太がいないことに気づいて「翔太様はどちらですの?」と尋ねる。

「先に結界の外へ、状況を確認しに」

胸が痛くなるのを抑えてあたしが答えると「そうですか…」と姫は切ない顔をする。悲しそうな、そんな表情をする。

…なんでそんな表情をするの。

嫌だな、なんて思ってしまう。

翔太はあたしの、なんて黒い黒い独占欲。

誰だって好きになる気持ちは自由なはずなのに。


ふっと視線を逸らすと晴人さんの顔が見えた。その顔は少しだけ暗くて、目を伏せている。苦しそうな、悲しそうな、そんな顔だ。

どうして…?

そう思ったけれど、姫の「さあ、参りましょうか」の言葉に晴人さんは「はい」とその表情を明るくした。一瞬で変えてしまった。


心が痛かった。


みんな、人に言えない大きな苦しみを抱えているって、気づいてしまったから。

そしてそれを隠しているんだって、知ってしまったから。


< 105 / 215 >

この作品をシェア

pagetop