ド天然!? 魔女っ子の秘密【2】

王城

依頼は2日後に決行されることになった。

そんな急に、とも思ったけれどいつもなら何の前触れなく依頼の場所へ送り込まれるから、まだこうして準備できる時間があるだけマシなのかもしれない。

依頼までの2日間できる限りの準備をしろ、とお父様には言われたけれど。


「何を準備すればいいんだろう」


自分の部屋の中、旅行かばんを広げて途方に暮れた。

依頼の間、あたしと翔太は城に住むことになった。

常に姫様の護衛をするようにという命令だから仕方がないけれど、泊まりがけで依頼を遂行するなんて滅多になく、あたしにとってはソルテリッジ魔法学園を除けば初めてのことだ。

かばんに着替えと魔術書を放り込んで、だけどそれ以上何が必要か分からなくなってしまった。


「王城か…どんなところだろう」


遠くからお城の外壁を見たことはあっても、城内を見る機会なんてあたし達一般人にはそうそうありえない。

ああ、だけど一度だけ城内に入ったことがあったかも。

あれは確か、お父様の付き添いだった。あたしがまだ3歳くらいで、本当に幼い時のことだ。

薄い灰色の塔に深緑の尖った屋根。

高い塀と強そうな門番。

光が降り注ぐ中庭と、そこで出逢った優しいひと。

覚えているお城のイメージはそれだけで、それ以上のことは覚えていない。

思いだそうとしているとコンコンと部屋をノックする音が聞こえた。

「すみません、千沙です」

「千沙さん?!」

声をかけてくれた人物は意外で、驚きのあまり声がひっくり返ってしまった。
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