【ワンルームと御曹司・灯里view】


 コンビニで、変な人を見かけた。

「くっそ!カードも使えないのかよ…!!」

 レジの前でそう嘆きながら、長財布から取り出したカードを片っ端から店員さんに渡している。けれど、どれも使えないのかレジからは何度もエラー音が響き、店員さんが申し訳無さそうにカードを返していた。

 そうして全てのクレジットカードを試したらしきその男の人は、がっくりとうなだれた様子で

「……悪い。これキャンセルで」

買おうとしていた缶コーヒーをコトリと力なくレジの隅っこに置いていった。

 そうしてコンビニから出て行く後姿はションボリしていたけど、身に付けている物は全然ションボリしていない。私みたいな貧乏人でも見ただけで分かってしまうほど立派なスーツ。オーダーメイドなのかも、サイズがぴったりで余計な皺やたるみがひとつも無い。靴だってぴかぴかだ。きっと本革ってやつだ。さっきの財布だって、チラリと見えた腕時計だって。どっからどう見てもお金持ちに見える。

 へんなの……お金持ちっぽいのに缶コーヒー1本買えないなんて。たぶん、コンビニにいた人みんなそう思ってたと思う。

 自動ドアから出て夜の街をフラフラ歩いていく後姿を眺めていたら

「お次の方どうぞー」

と、店員さんに声を掛けられてしまったので、私は手に持っていたプリンを落とさないようあわててレジ前まで進んだ。
 

この作品のキーワード
御曹司  同居  強引  気弱  社長  ワープア  地味  幼ななじみ 

感想ノートに書き込むためには会員登録及びログインが必要です。