【2】


 10月5日、日曜日。結城社長本日の予定は――

「取材を一件受けてから昼から中国の精肉工場視察、及び拡張の為の打合わせ。日本に帰国後、夜は本家のみによる親族会議。だから今日は晩飯いらない。帰りは11時くらいになるかな」

 朝食のホットケーキプレートを食べ終えると、歯を磨き身支度を整えながら結城社長は私にそう告げた。それを聞きながら疑問に思う。なんで私が彼の予定を把握しておかなくちゃいけないんだろう。と。

 しかも当然のように夜はうちへ帰宅することが前提になっている。あれだけ無理だと言ったのに、やはり社長はしばらくうちで暮らす事を決定したらしい。なんて強行採決だ。

「じゃあ行って来るな。あ、今日はワイン用意しといてよ。やっぱ寝る前はあったかいアルコールないと寝つき悪くてさ」

 靴を履きながら言った社長の言葉に心の中で(うそだ、一昨日も昨日もめちゃくちゃ安眠してたじゃないの)と毒を吐く。口に出したいけれど、今出すべき問題はそこではない。

「ワインって……社長が飲むやつって高いんでしょう?申し訳ないですが、私に高級趣向品を買う余裕なんてこれっぽっちも無いです」

 強引に押し切られそうな同居関係。問題は社長の傍若無人ぶりもだけど、生活にかかる金銭面も大きいのだ。なんせ、ひとりでも節約を重ねどうにかギリギリの状態でやってきたのに、それが途端に食費2倍だもの。水道光熱費だって確実に負担が増してるだろうし。そのうえワインを買って来いだなんて、冗談にもならない。勘弁して欲しい。

 けれどそこは身勝手キング。こちらの事情など察する訳が無い。

「グリューワインにするんだからそんな高級なのじゃなくていいって」

「ディスカウントショップで売ってる500円ので良ければ買ってきますけど」

「500ドルワインかあ……まあ無いよりはマシだからそれでいいや」

「ドルじゃない!円です、500円!」
 

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御曹司  同居  強引  気弱  社長  ワープア  地味  幼ななじみ 

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