空と君との間には

2話 空と君との間には

紗世が詩乃から、いつでもいらっしゃいと言われ、結城と共にマンションを出たのは。7時半キッカリ。

結城が車を運転しながら、「ゆっくり休めたか」と訊ねる。


「はい、とても細やかな方ですね」


「そう……助かってる」

結城は自分自身に言い聞かせるように、穏やかな表情をする。


会社最寄り駅付近。

結城は車を端に寄せ停車する。


「ここでいいか? 1件、寄る所があるから」


「あの……熱は大丈夫ですか?」


「微熱だ……昨日の件は話すなよ」

紗世は微熱と聞いても何処か信用できず、かといって確かめることもできずに車を下りた。


結城の居ない編集部は、何故か日が消えたように、寂しく感じられる。


昨日の騒動で部内の空気は、痛いくらい張りつめている。


10時過ぎ。
渡部に受付から「万萬さんとおっしゃる方が訪ねてきている」と電話が入る。
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