如何にして、コレに至るか
「窓、だよね……」
部屋の窓。窓周りの壁に、板が打ち付けられていた。
台風の日に、窓ガラスが割れないよう目張りをする様をテレビで見たことあるが、あれは外側でなければいけない。
内側からこんな真似をして、いったい何がしたいのか。
恐る恐る、窓辺に近づく。
雑に打ち付けられた板の隙間から、窓ガラスを見る。外の光景は見えない。太陽の光でも拒むかのように黒いフィルムが貼られている。錠が閉まっていた。
人差し指ぐらいなら入るかと、手をーーもとい、指を伸ばす。
かなり無理なことを指にさせているが、訳も分からない場所から出たい一心で錠に指をかけ、回す。
「開かない、なんで」
いくら指本来の力が発揮できない状態でも、錠を下ろすぐらい子供でも出来るだろう。
それほどの力はいらない筈なのに、錠は一ミリたりとも動かなかった。
指を引っ込め、よくよく見る。今のご時世、防犯のため、特殊な形だったり、開閉用の補助錠がついていたりもする。
目を細めもしたけど、どこからどう見ても普通の錠。しかして、心なしか、銀の部分に“てり”が見られた。
「接着剤で?」
にわかには信じられない。
こんな格子代わりの板を打ち付けるだけでなく、錠にまで開閉防止をしているなんて。
防犯にしては常軌を逸している。
手段がおかしい、だとすれば、目的が違う。
「落ち着け、落ち着け」
心臓に言葉が通じるわけないけど、そう言い聞かせるしか他なかった。
発狂しそう。声を荒げて泣き叫びたい。
それらをしないのは、ここがどこか分からないからだ。
迂闊なことは出来ない。
声を出して、“何かが”ここに来たらどうするんだ。
こんな状態だからこそ、冷静でいなければと本能から察する。
案外、人はタフなんだ。
身を守るための行動を混乱した頭の中でも見つけ出せる。
実際にこんな体験をするとしたら、取り乱すかと思ったのに、次は何をすべきかと考えている自分に驚くも、これが正解なんだと思考をフル活用した。
部屋の全貌を、今一度見回す。
扉が一つあった。リビングと思える時点で、あの先には廊下なり別の部屋なりがあるだろう。あそこを開けて、外に繋がるとは到底思えない。
窓から出られないなら、あの扉しか出る手段はないけど、一瞬、扉を開けた瞬間に男が立っているイメージが過ぎった。
女でも該当するけど、自身の性別が女である以上、脅威となる異性を最悪の想定として思い浮かべてしまった。