TRIGGER!2
プロローグ
プロローグ



 あの日はたまたま、朝から不快だった。
 つかず離れずの距離で全身を逆撫でされているような、たまらないストレス。
 いつもは、1日のうちでこんなストレスを感じるのはほんのわずかな時間だけだったのだが・・・その日だけは、何故か寝起きから動悸と息切れがハンパなく続く。
 だから、いつもの決まった時間ーー夕方アイツが起き出してから出勤する僅かな間ただじっとこのストレスに耐えればいいという訳ではなく・・・その日は1日中、今にも暴れ出しそうな自分をぐっと押さえつけなければならず。
 夕方とうとう耐えきれず、自分自身の何もかもを木っ端みじんにする直前。


「あーあ。今日もあんたの顔見なきゃいけないの」


 嫌悪感丸出しの、こんな声が聞こえた。
 こっちはストレスで髪の毛をかきむしっているのだが、あっちは寝起きで髪の毛がボロボロだ。
 その長い髪の毛を真っ赤なマニキュアが塗られた手でかきあげて、薄汚れたキッチンのテーブルに座っているこっちを蔑んだ目で見下ろしている。
 そんな憎らしいあいつは、リビングのソファーに腰を下ろして半ば仰け反るようにしてタバコに火を点ける。


「何やってんのよ、コーヒー入れてよ。ったく、トロいんだから」


 こちとら、朝からムカついているのだ。
 半分はそれを主張したかったのかも知れない。
 無意識に、あいつを睨み付けていた。
 それが気に入らなかったらしい。


「何よその目は」


 低い声を出し、こっちを睨み付けながら立ち上がる。
 これも、いつもの事だ。
 そしてあの女は、いつもこっちを殴る。
 だから我慢する。
 あっちは大人。
 こっちは・・・。
 ーーガタン!!


「・・・・・・」


 ダイニングの、座っていた椅子が倒された。
 てっきり殴られるかと思ってたのに、今日は違った。
 椅子ごと、蹴り倒されたのだ。
 不覚にも、ダイニングの床に転がってしまう。
 それをいいことに、腹、背中、太もも、頭、全身を連続で蹴られ始める。
 こうなったら、声も出さずただそのまま、時間が過ぎるのを待つだけだ。
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