僕が彼女にチョコを貰えなかった理由
おまけ2〜総一郎の場合〜
「ねぇ、総一郎?ちゅーして?」


そう言って、彼女は俺の首に手を回し、顔を近づけて来る。



甘えるような声色も、誘うような上目使いも、嫌悪の対象でしかなかったはずなのに、愛しい彼女がやれば違うらしい。


その誘惑に抗えそうにない。


潤んだ瞳に、軽く開いた口。


明らかに酔っているのに酒の匂いは一切しない。


そりゃそうか、いくら酒がきいているとはいえ、チョコ3個でここまで酔える人間は稀だろう。



赤く艶めく唇に吸い寄せられる様に、軽くキスをする。



「だーめ。もっとちゃんとして?」



俺の頬に手を添えて、もっととねだる彼女に、理性が崩壊した。



20歳を越えたばかりで、いつもは幼さが目立つ彼女は、目の前にはいない。



もともと彼女の前では冷静で居られない事ばかりの様な気がしていたが、今日の破壊力な桁違いだろう。


彼女の望み通り深く唇を合わせれば合間に漏れる嬉しそうな声に体が熱くなる。



理性の崩壊した頭で考える。



そうだ。何を抑える必要がある?


目の前に居るのは、れっきとした自分の恋人だ。


理性を保つ必要なんて無い。



そう結論づけると、俺はひなを抱き上げ、ベットにおろした。



勢い余って倒れ込んだので、心配になって彼女の顔を見れば、ひなはちょっと驚いた顔をした後、嬉しそうに微笑んだ。


「そーいちろー、だーい好き」


そう言われて抱きしめられる。



ホント、久しぶりに会ったのにろくに会話もしてないことに罪悪感を覚えつつも、どうすることもできない。



ギュッと抱きしめて来るひなに、そろそろ理性の限界が近づきそっと腕を解こうとするが、出来ない。


「ひな?」


呼びかけるが、返事は無く、嫌な予感に耳をすませば、聞こえてくるのは規則正しい・・・



寝息。
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