コトノハの園で
3・サクラのタヨリ




 ―*―*―*―*―*―


……鼻水がさっきから止まらない。足どり……少し、おぼつかない気がするような。


病は気からも一理あるのが信条だけど、認めると負けたような気持ちにもなるけど、明らかに風邪の予感だ。


予感の段階で終わらせるため、一刻も早く帰宅しようと駅の改札を抜けた時、


「菜々ちゃーんっ!!」


遠くから声がした。


辺りの様子に目をやると、道路を挟んだ向かい側の本屋から出てきた桜ちゃんの姿があった。友達と別れ、私の方に走ってくる。


「ヤー、普通のボリュームで喋るの久しぶりだねっ! 図書館じゃヒソヒソばっかで消化不良ってカンジ?」


「……、そうだね」


咄嗟に口元を手で塞ぐ私に、桜ちゃんは不思議そうな顔をする。


「菜々ちゃん、どーしたの?」


「私、風邪気味っぽいから気をつけてね。桜ちゃん受験生だし、私マスク持ってないから」


「平気だよっ! まだ十一月だし。ちなみに、桜も風邪気味ー」


そんな恐ろしいことを、カーディガンも何も羽織らず、セーラー服一枚だけの格好で言うものだから、私は桜ちゃんを引き連れ、近くのドーナツ屋に緊急避難した。


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