*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~

・卒業

昨日わたしは伸ばしていた髪をバッサリ切った。

長さはちょうど入学した頃と同じぐらいの顎下のショートボブ。

美容師さんは何度も「ホントに切っていいの?」って聞いてくれたけど、わたしの決心は変わらなかった。

髪を切ることでシィ君への想いを断ち切れるような……そんな気がしたんだ。



今日は卒業式。

式の最中もその後も、結局シィ君とは一言も言葉を交わすこともなく、それどころか、目を合わすことすらできなかった。


ユカリちゃんと間違えられてキスされたこと。

そんなキスに舞い上がっていた自分が恥ずかしかった。

そして、何よりもユカリちゃんに対する罪悪感が重くのしかかっていた。


ユカリちゃん……ごめんね。

わたしあの時、ずっとこのままでいたい……なんてそんなこと考えてたんだ。




「ぎゃー。わたし、これめっちゃヘン顔――!」


目の前で、アカネちゃんが叫んだ。


わたし達は式を終えた後、教室に残ってアルバムを一緒に見ていた。

教室にはまだ数人の生徒が残っている。

みんな写真を撮ったり、アルバムにメッセージを書いてもらってたり、思い思いに別れを惜しんでいるようだった。


だけど、シィ君の姿はそこにはなかった。


もう帰ってしまったのかもしれない。


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