*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~
もう一度視線を桜の木に戻した。


この渡り廊下から見える中庭の景色は、入学して以来、わたしのお気に入りになっていた。


手入れの行き届いた花壇には、鮮やかな色をした春の花々が咲いている。

その間を通るレンガの小道と、庭の中央に置かれたアンティーク風のベンチ。

英国調っていうのかな。

かなり乙女チックな趣味だ……。

でも、こういうのわりと好きなんだ。


いつかアカネちゃん誘って、ここでお弁当食べたいなぁ。


そんなこと考えながらペンを走らせていると、ふいに風が吹いて髪を揺らした。

アゴ下で揃えられたショートボブはわたしの定番のスタイル。

これはこれで気に入っているけど、せっかく高校生になったことだし、ちょっと伸ばしてみようかなぁ……なんて考えたりもしてるんだ。



この時はまだ気付きもしなかったんだ。


これから起こる出会いのことを。


『人生はすべて、偶然じゃなく必然』

誰かがそんなことを言っていた。

そうなることは、最初から全て決まっているのだと。


だとしたら、引越してこの高校へ入学したことも、

この渡り廊下を通りがかったことも、

桜の花に目を奪われてこの場所で足を止めたことも……

全ては偶然ではなく必然だったのかな。



この日、この時間、この場所で……

彼に出会うことも……。


それは生まれたときから決まっていたわたしの運命だったのかもしれない。
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