*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~
ちなみに“シィ”っていうのはオレのあだ名。

香椎(カシイ)だから“シィ”。



目を細めてジッと見つめる。


かなりの至近距離に近づいてようやくわかった。

小学校からの親友、サトシだ。


本日の絶不調の原因を作った男。



「あれ? メガネかけてへんの?」


能天気にそう言われて、カチンときた。


「誰のせいやと思ってんねん?」


オレは昨夜の出来事をサトシに話して聞かせた。


昨夜、早めにベッドに入ったオレは、夜中にけたたましく鳴る携帯の着信音で起こされた。

寝ぼけながらベッドサイドのチェストの上を探っている時に、そこに置いてあったメガネを落とし、さらにそれを踏みつけて割ってしまったんだ。


たいした用でもないのに電話してきた、サトシを恨みたくなる。

眼鏡代よこせ。

ちなみにオレの視力は、0.1も無い。

今もぼんやりとしか景色は見えていない。


黒板の文字も見えないから、今日の授業は当然のように集中なんてできなかった。



「なんでやねん。それ、別にオレが悪いわけちゃうやん」


話を聞いたサトシは悪びれる様子もなくケラケラと笑っていた。


「まぁ。そうやけど……」


なんとなく腑に落ちない気がしたが、とりあえず納得することにした。
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