*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~
「なぁ、ところで、ユウ見かけへんかった?」


「さぁ。まだ教室におるんちゃう?」


オレの問いかけにサトシは肩をすくめた。



サトシとはそこで別れた。


廊下を歩いていると、何人もの知り合いとすれ違った。

よく見えてないが、多分そうだと思う……。

この高校には、同じ中学出身のヤツらがやたらと多い。


さっきからみんな声をかけてくれるんだけど、その都度「メガネは?」って驚かれるのが面白い。

面倒なので、いちいち説明しねーけど。


適当に愛想を振りながら、オレは目当ての教室へ向かう。


開けっ放しになった扉から、中を覗き込んだ。


いつだって……

メガネなんかなくても、すぐに見つけられるんだ。


「ユウ!」


入り口のすぐ側で誰かと話しこんでいた彼女は、オレの声で振り返る。


「あ! ナオ! え――? メガネは?」


ユウ。

幼稚園の頃からの幼馴染であり、オレの一番大事な女の子。

彼女の存在……それがこの高校を選んだ理由だった。


彼女はオレを“ナオ”って呼ぶ。

直道の“ナオ”。

他のヤツらとは違う、彼女だけが使う、オレの呼び名。

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