俺様副社長に捕まりました。
1章 秘書辞めます

結婚したいお年頃

「桃、今日の亀島さんとの会食だけどアレって用意できてるか?」
「もちろんアレですよね。大丈夫ですよ。朝一で並んでゲットしましたから」
私は桐山専務に見せるように紙袋を持ち上げた。
「さすが桃、いつも悪いな・・・桃の家の逆方向なのに・・・」
「とんでもございません。」
桐山専務の言うアレというのは専務が幼少の頃から大好きな藤味堂の薄皮饅頭。
薄い皮と甘すぎない上品な餡子の絶妙なバランスがたまらない藤味堂の看板商品。
専務はいつもこれを取引先への手土産として持参する
のだがこの薄皮饅頭人気商でしかも数量に限りがあるため午前中に完売してしまう。
その為、手土産が必要な日はいつもより30分早く家を出て藤味堂に寄ってから出社するのだ。
たしかに家から逆方向だから大変といえば大変なんだろうけど
私もここの薄皮饅頭が大好きなので専務の分とは別に自分用のおやつとして必ず1個購入
している。これが食べれるからあまり苦にはならない。

「専務・・・どうぞ」
そして専務のおやつも忘れずに1個購入。お茶と一緒に買ったばかりの薄皮饅頭を
差し出すパッと笑顔になる。
「おお~。ありがとな桃」
私は会釈をすると席を外した。

私、小野寺桃花はここ山岡物産の代表取締役専務の秘書として働いる26歳。
秘書の仕事は漫画やドラマの様なイメージとは違い、かなりハードな仕事だけど
私はこの仕事が好きだ。
できればずっとこの仕事をしていたいとおもうのだけれど・・・・
「元木主任、桐山専務からお預かりした書類です」
「わかった・・・ここに置いておいてくれ」
「・・・はい」
秘書課主任の元木裕人(もときひろと)は4月の部署内移動で常務秘書担当だ。
そして私の彼氏でもある。
お付き合いは3年になるが、このことを知っているのは秘書課の同期で庶務担当の
相沢未来(あいざわみき)だけだ。
社内恋愛が禁止されているわけではないが会社の上層部と
行動を共にする事の多い部署のためあまりプライベートな部分を出したくないというのが
理由その1。
もう一つは裕人は私より3つ年上の29歳だが、そのルックスの良さは社内で5本の指に
入る程。その為裕人狙いの女性社員の目が怖い。
私は他の秘書課の女の子たちよりあまり目立たった人間ではない。
裕人から交際を申し込まれたのも顔やスタイルというわけではなく
気遣いができ、癒されるという理由だと言われた。
だけど女の目からみたらなんで自分よりパッとしない人が彼女なの?って思うに
違いない。そういう全てのことにいちいち対応するのは面倒というのが本音。
だから一応理由その1を裕人に告げて付き合いを内緒にしてもらっていた。

そして3年
よくバレずに3年続いたとある意味驚いている。

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