俺様副社長に捕まりました。
水沢さんか・・・・あれ?この名前聞き覚えが・・・
そういえばうちの会社の副社長も確か水沢だったっけ。
でもうちの水沢副社長とは月とすっぽんだわね。
山岡物産の水沢副社長と言えば社長の甥っ子で我が社ナンバー1のイケメンと言われる男
副社長にしては若いがかなりのやり手でここ1~2年の山岡物産の業績は副社長なしでは
成し遂げなかったと言われている切れ者。
そんな人と比較しちゃうのはかえってさっきの水沢さんに悪いと
思うほど格差を感じた。
帰宅すると私は今日のことを思い出さないように
借りてきたDVDを睡魔が襲うまで見続けた。
だけど心の底から笑うことは出来なかった。


翌日、出勤すると昨日に引き続き秘書課は賑やかだった。
裕人のデスク近くに人だかりとまでは言わないが人が集まっており
その中心には裕人とその婚約者である園村常務の一人娘の友香さんが
秘書課の人たちと嬉しそうに何やら話をしていた。
どうせ婚約したんです~って言いまくっているのだろう。
相手が相手だけにちょっとしたお祭りムードのようだった。
裕人の嬉しそうに友香さんを見つめる姿を見せつけられているように見えて
正直ここから逃げ出したい気持ちだった。

きっとこの先もこんな場面を何度も見ることになる。
私はこの状況に耐えられるのだろうか。
笑って裕人におめでとうって言えるのだろうか。
下手すると結婚式とは言わなくても二次会に出席してほしいと
後輩に誘われたりするのだろうか・・・
仕事をしながらネガティブになる自分が惨めに見える。
お手洗いに行って鏡に映る自分の顔は覇気がなくなっていた。

それから数日たったが状況はよくなるどころか
悪くなる一方だった。
友香さんは1日おきに秘書課に顔を出すようになるし
見たくないのに仲の良い2人の姿が目に入り
苦痛としか思えなくなった。

秘書の仕事は好きだ。やりがいもある。
だけどこのままだと心が折れてしまう。
そこまでになってもやりがいのある仕事なのかと聞かれたら
やりがいがあると言える自信が今の私にはない。

初めてこの会社を辞めたいと思った。

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