俺様副社長に捕まりました。
「・・・・・・・」
「おいどうした?」
ふとよぎった裕人との思い出に胸が引き裂かれそうになる。
思い出さないようにしていたのに・・

「・・・・同じ職場の彼が突然別の女性との婚約を発表したんですよ。
3年も付き合ってて・・・そろそろ結婚かもって思ってたのに・・・
しかも相手は会社のお偉いさんのお嬢様・・・・
私の3年ってなんだったんだろう。バレないようにみんなに内緒で付き合ってたのに
別れを告げられたのだって婚約したって聞かされた後。
別れを拒むことすら許されなかったってことよ。
おまけに毎日毎日聞きたくもないノロケ話を聞かされ・・・元気になる訳無いじゃん
もう~会社やめて全然違う仕事に転職しようかな・・・」

わかってる。レンタル屋で言うことじゃなし
会って2回目の水沢さんにあたるのは間違ってるって
でも・・・ちょっと限界感じちゃんったんだもん。
水沢さんに言ったからってどうにかなるわけじゃないこともわかってる。
わかってるけどさ~
この理不尽な思いを誰かに聞いてもらいたかった。

唇の震えが止まらない。

だけど水沢さんは何も言わずただ優しい目で私を見つめ
まるで子供をよしよしと慰めるように私の頭を撫でていた。
その手が暖かくて落ち着くことが出来た・・・
それからDVDを返却し水沢さんはその中の1枚(12巻)を借りて
そこで別れた。
特に互の連絡先を交換するわけでもなく、特別な約束をしたわけでもない
でもなんとなくだけど
ここのレンタル屋に来たらまた会える・・・そんな漠然とした思いだけは強かった。
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