死にに行く。ナイフと馬人間と

これは、僕自身にも問題があった。


借りる時に強引に借りたり直ぐに返すと言ったりしたからだ。


当時の僕は、本当に直ぐに返せると思っていたのだ。


借りたお金は全て父に渡した。


消費者金融を入れるとその金額は一千万円を越えていた。


父を信じ過ぎていたからだ。


父が大丈夫と言えば大丈夫なのだろうと信じきっていた。


父は一代で建設会社を立ち上げて一番良い時で年商十億を越える会社にしたのだ。


下請けを、主にしている会社としては、僕の住む地方では異例の事だった。


僕は、父を過大評価していたのだろうと今なら思えるが、その頃はとにかく会社を助けると夢中だった。


結果的に借金を返しても返しても上手く行かずに死を選ぶ事になった。


古い客もほとんど居ないバスの中で僕は、ぼんやりしながら思い出に沈んで行った。


子供の頃に両親とフェリーで旅行した事や高校に入ったばかりの頃の春の草木の匂いが思い出された。


ボロボロのナイフだが刃の部分だけ見事に研いだ光も…

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