オレンジロード~商店街恋愛録~


すっかり夜の帳の下りた商店街の物陰から、ハルは『長谷川酒店』を覗いた。

待っていると、少しして、「お疲れさまでした」と言いながら、レイジが出てきた。


ハルはその瞬間、足を踏み出し、突進する勢いでレイジを捕まえた。



「うわっ、ちょっ」


よろけたレイジ。

レイジは、それがハルであると気付くと、端正な顔いっぱいに驚きをあらわにし、



「な、何事? 痛いし、頼むから離して」

「嫌だね。今日こそ俺の酒に付き合ってもらう」


にやにやにと言うハルに、レイジは「えー?」とげんなりする。



「もしかして、そんなことのために俺を待ち伏せてたの? 怖いよ。俺、男にストーカーされるなんて思わなかった」

「四の五の言うな。俺はたった今、好きな子に振られたんだ。よって、レイジに拒否権はない」

「いや、それ、どういう理屈かわかんないんだけど」


レイジは、今度は呆れた顔になった。

「とにかく離れて」とハルを突き飛ばしたレイジは、



「まぁ、いいや。今日だけだからね」


と、諦めたように言った。



「しょうがないから、たまには付き合ってあげるよ。ハルは俺の大切な友達だから」


こいつめ、傷心の俺に雪菜ちゃんと同じこと言いやがって。


ちょっとムカつく。

思わずレイジを足蹴にしてやったら、



「痛いってば! 何だよ、もう! わけわかんない!」


大袈裟に言うレイジを見て、ハルは腹を抱えて笑った。
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