オレンジロード~商店街恋愛録~
「大丈夫だよ。何があっても俺が雪菜の手を離すことはない。そう約束したろ?」

「………」

「ほら、見てよ。俺の腕、昔より太くなった。力だって強くなったんだ。だから、きっと大丈夫だよ」


何が、どう『大丈夫』なのかはわからない。

その根拠のない自信はどこからくるのか。


雪菜が少し呆れ、力なく笑ったら、それを見たレイジは、



「今度さ、一度、地元に戻ってみる?」

「……え?」

「だって、今、雪菜の中には迷いがあるんだろ? だったらそれを取り除かないことには、ちゃんと笑えないじゃない」

「………」

「もう一度、お父さんに会って、言ってやればいい。俺たちはこの町で、毎日、楽しくやってるよ、って。それでも聞く耳を持ってくれなかったら、その時はその時だよ」


何だか気が抜けた。

私は少し、焦って難しく考えすぎていたのかもしれない。



「そうかもしれない」


雪菜がうなづくと、レイジは笑いながらキスをしてくれた。


出窓で凛として並んでいる真っ赤なバラの花を見る。

隣には、愛しい人が。



「今日は記念日だし、改めて、これからもよろしくね」

「こちらこそ」


いつか、レイジと、胸を張って家族になりたいと思った。

だから、そのために、もう一度、父と向き合い直そうと思う。


ふたりで、ここで、幸せになるために。










END

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