オレンジロード~商店街恋愛録~
「ありがとう、ハル。大好き」


今度は嬉し涙が溢れてくる。

ハルは呆れた顔でその場に座り、



「ほんと、何で俺は苦労する道を選びたがるのかねぇ。自分で自分が嫌になるよ」


と、ぼやいた。

そしてため息混じりに、



「安易にやり直すみたいなこと言わなきゃよかった。おかげでこの馬鹿はつけ上がるし、また猫の世話しなきゃいけなくなったし、俺、いいことなしじゃね?」

「あたしのこともチコのことも好きなくせに」

「いや、そこまでは言ってない。妄想はやめろ」

「ちょっと! 何よ! ひどいじゃない!」


思わず大声を出したら、腕の中にいたチコは驚いて逃げて行った。


結は頬を膨らませる。

ハルは「あははっ」と声を立てて笑い、



「泣いたり、怒ったり、忙しいやつだな、お前。見てるだけで飽きないよ」


褒められたのか、けなされたのか、わからない。

不貞腐れたままだった結の腕が引かれる。



「でも、とりあえず、今夜は帰さないから」


これがほんとにあの頃のハルと同一人物なのか。

そう思ったら、おかしくなって、結も笑いが込み上げてきた。




ゆっくり、ふたりで、この10年を埋めて行こう。

今度は、チコも一緒に、やり直そう。


もう二度とあんな終わり方なんてしないように。










END

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