イケメン同期に素顔を見抜かれました
August


玄関で靴を履いていると、台所からお母さんの声がした。

「芽衣~。今日はご飯いらないんだったっけ?」

「うん。会社のビアガーデンで遅くなる」

「わかった。行ってらっしゃい」

「行ってきまーす」

元気よく外に飛び出すと、痛いくらいの直射日光とセミの声。

まだまだ夏は終わりそうにもない。

うだるような暑さの中、私は駅へ向かって歩き出した。




私の勤める製菓会社は、家から電車で30分ほどの場所にある。

私、崎坂芽衣(さきさか めい)は今年の春、大学を卒業してこの会社に就職した。

「芽衣、料理作るのも食べるのも好きだし、そういうのに関わる所探してみたら?」

お姉ちゃんのそんな一言から、縁あってこの会社に就職することができた。

私が昔から好きなおせんべいの味を守りつつ、時代にあった新商品も開発していく。

所属する商品開発部では、主に新商品が市場に出ても問題ないのかといった品質チェック等を行う研究チームに配属され、現在先輩社員から絶賛ご指導賜り中、の新社会人なのです。




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