イケメン同期に素顔を見抜かれました
December


出勤してみれば、チーム長が鼻歌を歌いながらコーヒーを飲んでいた。

「おはようございます。ご機嫌ですね、チーム長」

「おはよう。今日はクリスマスイブだからねぇ。家族でパーティーなんだ。崎坂さんは?」

「……あー、残念ながら私も家でケーキ食べるクリスマスです」

彼氏持ちの紗希を誘うなんて有り得ないし。

有村に声を掛ける勇気なんて……、あればとっくの昔に自分の気持ちを伝えているはずだし。

「児玉さんもパーティーだろうから、今日は定時で上がれるように仕事頑張ろうね」

珍しく朝からやる気に溢れるチーム長に苦笑いを向け、私も仕事の準備に取り掛かった。




「真理と別れようと思ってる」

有村から、この言葉の結果は聞いていない。

私からも、聞くことはない。

ふたりの関係は一緒に出掛けてからも、出掛ける前と変わることはなく。

紗希に呆れられながらも、私の密かな片想いは続いていた。




チーム長のやる気に導かれるように、ハプニングもなく仕事は終わり。

「じゃあ、崎坂さんお先に。お疲れ様」

「芽衣ちゃん、メリークリスマス!」

チーム長と児玉さんは、急いで退社していった。

「お疲れ様でした」

ふたりにつられて帰る準備をしたものの、家に真っ直ぐ帰っても何もすることがない。

なぜなら、いつもクリスマスには必ず家にいたお姉ちゃんが、今年はいないからだ。




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