不機嫌な君
「泣いた理由は?」
「…ぅ…あ!…そうです。そうです。幸せだなあと思ったら、勝手に涙が出たんですよ」
そう言って笑顔を見せた。

「…」
…明らかに不審がっている。笑顔を浮かべたまま、冷汗をかく私って…。

「私のことはいいですから、帰らないなら寝てて下さい!風邪が長引いたらどうするんですか?先生も言ってたじゃないですか!過労もあるから、しっかり休養を取って下さいって」

「…どうしても、理由は話せないと?」
「…理由は今言った通りです」

頑なに、本当の理由を隠した。
…金崎部長は溜息をつき、私の頬に触れた。

「…全く、強情な女だな」
「…」

「…お前が話してくれないから、また、熱が上がってきた」
「エッ⁈…だから、寝てて下さいって…⁈」
慌てる私を、金崎部長は抱き寄せた。
私は抱き締められたまま、固まる。

…だって、言えないもん。
…言ったら、金崎部長が私から離れて行ってしまいそうで…
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