不機嫌な君
「…失礼します。…あの、ご用件とは一体なんでしょうか?」

ビクつきながら、問いかけた。
…社長をこんなに間近で見るのは初めてだった。

…金崎部長にそっくりだ。イケメンで、それでいて年を感じさせない若々しさ。

…金崎部長と違うところがあるとすれば、物腰がとても柔らかい人だと言うことか。

「…すまないね。突然呼び出して」
「…いえ」

「…用件は、言わなくても、大体察しがついてると思うが」
「…」

「…私は回りくどい事は嫌いなんでね。率直に言わせてもらうよ」
「…」
その言葉に息を飲んだ。

「右近と別れなさい。…君と右近では、住む世界が違う。右近は次期にこの会社の社長になる身。一時の感情で、一生を棒に振ってほしくないんだよ。…わかるね?」

…そんな事は言われなくてもわかってた。自分では、金崎部長に不釣り合いだと言うことも。

…最高の婚約者が居る事も。

…それでも、私は金崎部長が好き。この想いは、誰にも負けない。
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