【短】俺の花嫁!
「やだ、どうして――?」
『言っただろ、離さないって。』
「っ」
彼の勝ち誇ったような余裕な顔を目の前に、自然と目頭が熱くなっていく。
さっき会いに行って、玉砕したばっかりなのに。
今日は会えないと想ったばかりなのに――会えた。
大好きな彼に、会えた。
『篠原 茉央さん。』
「っ!」
『俺と――結婚してください。』
夢に見たことが、現実になる瞬間。
私は、これ以上ない幸せを感じていた。
今なら、言える。
等身大の私が彼に釣り合うのかなんて、そんなどうでもいいことをグダグダ考えるのはもうやめた。
彼と同じ未来を歩みたい。
彼の見ている世界を、私も一緒に味わいたい。
「……っ、もちろんっ!」
形振り構わず彼の胸に飛び込んだ私を、しっかりと受け止めてくれる彼の存在を、全身で感じた私は、自然と笑みが零れる。
この時から、私と彼の人生が始まった――。