天翔ける君
天翔ける君




奇妙な光景だった。

屋敷に住む全員が縁側に出て、夜空を見上げている。
三日月の美しい、星の輝く空の一点を睨みつけている。

恵都も倣って空を見上げてみるが、変わったものはなにも見つけられない。
それなのに、緊張した空気はピリピリと伝わってくる。

「どうしたの?」

隣の夜鬼に問いかけてみるも、彼は返事もせずに握る手に力を込めるのみだ。

数秒ののち、恵都は気づいた。
夜空に人影が見えたのだ。

いつだったか夜鬼が千鬼の屋敷に現れた時のように、夜空に人影が浮かんでいる。
あの時は土砂降りの雨のせいでよく見えなかったが、今夜は月明かりで幾分か明るい。
雲もなく、月と星の明かりのおかげで、夜目の利くようになった恵都には十分な明るさだ。


人影は夜空を翔けている。

ゴロゴロと、空が音を立てた。
晴天のはずの空から雷の音が降ってくる。

四つの人影がこちらに向かって翔けてくる。
星の瞬く晴天の夜空を、雷の音を引きつれてやってくる。



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