妖刀奇譚





女の子らしいパステルカラーではあるけれどTシャツにロングパンツという色気の欠片もない組み合わせだ。


部屋着の話になったときにそれではだめだと実央に怒られ、半ば強制的にルームウエア用のもこもこしたパーカーを買わされた。


よく羽織ってはいるがたまに脱いでいることもあり、初めてその恰好を目にした玖皎に



『なんだその恰好は、そんなにみっともなく腕を出してどうする。


仮にも女子だろう、はしたない』



と、昭和が舞台のドラマに登場する中年女性が口にしそうなセリフをぶつけられた。


そういえば、制服のスカートにもあまり好ましくない反応をしていた。


平安時代の感覚でいけば、Tシャツもスカートも大胆な露出ではしたなく見えるのだろう。


もちろん、今は平成なので適当に流して相手にしていない。



「玖皎、あたしお風呂に入ってくるね」


「ん、分かった」



パソコンがこれまでにないくらい熱くなってしまったので、玖皎は今ラジオを聴いている。


自由にうごかせる身体がないので、娯楽の幅がとてつもなく狭そうで気の毒だ。


物が娯楽を求めるのもおかしな話であるが。



「思葉」



廊下に出ようとしたところで呼び止められた。


思葉はドアノブを握りながら太刀掛けに立てかけた玖皎を振り返る。




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