妖刀奇譚
「ああ、それにしても、今日は久しぶりに消耗したな。
振り回されるだけなのと自分で自分を振り回すのとでは大違いか」
ふいに玖皎が眠そうな声になった。
人の姿を維持していたら、大きなあくびをしていそうな声である。
「疲れてきたな……おれは寝るぞ。
おまえも早く休め、人間の身に妖怪の悪気は堪えるものだ」
「あ、うん、おやすみ……」
壁に掛けてある時計を見ると、日付が変わってもう1時間くらい経っている。
いつも今日のうちに就寝しているからだいぶ夜更かしだ。
振り向くと太刀はもう静かになっていた。
あっという間に眠りについたようだ、つくづく人間臭い妖刀である。
念のためもう一度戸締りを確認してから、思葉もベッドに入った。
横になったことで、どっと疲れが押し寄せてくる。
カーテンの隙間から差し込んでくる月明かりを見ながら、ふと考えた。
(あんなに必死になって喋ったの、久しぶりだな……もしかしたら初めてかもしれない。
どうしてあんなに熱くなっていたんだろう……ちょっと、恥ずかしい)