妖刀奇譚









いつもより少しだけ家を出るのが遅くなった。


登校するとクラスメイトの半分以上が来ているらしく、教室はざわざわしている。


だが、普段通りの楽しげなものではない。


室内の雰囲気もなんだかどんよりしていて、それが音となって感じ取れた。


思葉(ことは)は廊下で立ち止まり、開け放されているドアから中を覗いた。


後ろのロッカー棚のところにちょっとした人だかりができている。



「おはよう、來世(らいせ)」


「おう、はよっす」



思葉は数学の課題に取り組んでいる幼馴染みに挨拶し、その前の自分の席に鞄を置く。


教科書を机にしまいながら、ぐるりと室内を見回してみた。


後ろで半円をつくっている人以外にも何人かがちらほらいるが、そのほとんどの意識が後ろに集まっている。


廊下から隣のクラスの野次馬まで見ている。



(……鞄、置きに行けないじゃん)



思葉のロッカーはちょうど半円ができているところにあった。


お葬式のような雰囲気のところにずかずか入って行けるほど無神経ではない。


どうしたものかと少し悩んで、自分とはまったく別のことで頭を悩ませている來世をつついた。




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