【完】狂犬チワワ的彼氏
狂犬チワワ的彼氏



妃由 side



「喧嘩した!?」

「うん」

「え、あの木塚拓海と!?」

「…うん」



昼休み。

あたしは今朝拓海くんと喧嘩をしてしまったことを(と言っても、あたしが一方的に怒っただけ)、直樹に話していた。

直樹は図書委員に所属しているため、今日は当番でカウンターの席に座っている。


あたしが今朝からずっと元気が無いから、直樹に「何かあった?」と聞かれて、今朝のことを話したのだ。


あたしのその酷く落ち込んだ様子を隣で見ると、直樹は読んでいた本をパタン、と閉じて言った。



「でも…まぁ、その話だけ聞くと明らかに木塚が悪いけど…本当は、お前には言えない何かがあるんじゃねぇの?」

「…そう、かなぁ。でも、龍也くんの時だって同じこと言ったんだよ、“関わるな”って」

「…んー…」



あたしはそう言うと、さっきのことと、龍也くんの時のことを思い出して深くため息を吐く。


…まさか拓海くんが、またあんなこと言うなんて思ってもみなかったな。

だけどさすがに、“嫌い”は言いすぎた。今更ながらに反省。


でもだからといって、今回ばかりは自分からは謝れないし。

だって理沙ちゃんは、本当に良いコなんだから!


あたしがそう思っていると、その時直樹が言った。



「じゃあ、木塚のこと…嫌いになった?」



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