Love nest~盲愛~


店内左奥のテーブルの手前で、あかりさんが静かに足を止めた。

そして、優雅な所作で膝を折り、低い体勢でテーブルの奥に座る男性へ丁寧にお辞儀をする。


「失礼致します。こんばんは、宮本様。ご無沙汰しております」

「お~やっと来たな、待ちくたびれたぞ」


柔らかい笑みを浮かべながら、ゆったりとした口調で挨拶をするあかりさん。

キャバ嬢と言っても十人十色。

テンションの高い子が多い中、あかりさんは終始落ち着いていて、ふんわりと花のような笑みを浮かべる女性である。

さすが、NO.1というだけの風格がある。


あかりさんが宮本様の右側に着いたのを見届け、あかりさんに倣うように膝を折り、腰を落として丁寧にお辞儀をする。


「こんばんは、初めまして、えりなと申します。ご一緒させて頂いても宜しいでしょうか?」


接客マナーで教わった通りの台詞をゆっくりと落ち付いた声で話すと。


「宮本様、えりなちゃんは今日が初めてなんです。私の可愛い妹分なので、可愛がってあげて下さいね♪」

「そうか、今日が初めてなのか。どれどれ、もっと近くで顔を見せてご覧?」

「はい、有難うございます。……失礼致します」


優しく手招きする宮本様は、50代と思われるロマンスグレーの似合う紳士。

ビシッとスーツを着こなしているが表情はとても穏やかで、あかりさんが言うように優しい雰囲気が漂っている。


あかりさんのフォローもあり、私は宮本様の左側に無事に着く事が出来た。

すると、


< 2 / 222 >

この作品をシェア

pagetop