Love nest~盲愛~
静寂な夜


所持金2560円だった私が、2日目にして100万2560円となった。

あてがわれた自室は、贅沢過ぎて居心地が悪い。

昔は私だってお姫様のような部屋で暮らしていた。

だから、こういうテイストが嫌いな訳じゃない。

だけど、この贅沢過ぎる部屋で生活する事の対価として、あの人の要求を無条件で呑まなければならないのだから。


目の前の大金に眩んで、自暴自棄で飛び込んだ世界。

だけど、彼が求めるモノが常軌を逸し過ぎて、正直不安で堪らない。


大金と引き換えに、身体だけの関係。

それなら理解出来るし、納得もいく。

だけど、昨夜も彼は私を求めて来なかった。



ホテルから戻った私は、彼の自宅へと連れて来られた。

けれど、彼は降りる事無く、再び仕事へと戻って行った。

更に今井さんの話では、彼は夕方の便で香港へと向かったという。

一週間の出張。

そんな話、一言も聞いてない。

………ううん、話して貰える理由が無い。

だって、家族でも恋人でも友達でも無いのだから。


顔を合わせなければ合わせないでホッとしている自分と、何も要求されない事での不安が募り、どうしていいのか分からずにいた。



私は彼にとって、一体何?


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