あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。
―――諦めてもいいんだよ、彰。



自分の命を捨てることなんて、やめてもいいんだよ。




特攻を諦めたことを責める人なんかいない。



もしも責める人がいたら、その人が間違ってる。




彰が特攻を諦めても、日本は終わったりなんかしない。



戦争に敗けても、日本は終わったりなんかしない。






ねぇ、彰。



本当に行っちゃうの?




死んじゃうの?





いやだ、いやだよ………彰。






でも、あたしの気持ちはうまく言葉にならなかった。





ただ、「行かないで」と繰り返すことしか、あたしにはできなかった。




彰はただ静かにあたしを抱きしめている。




「行かない」とは言ってくれなかった。






「………ごめんな、百合。


君が欲しがる言葉を、俺は言ってあげることができないよ。


その代わりに、一つだけ、贈り物をさせてくれないか」






「え?」と目を上げると、彰が微笑んで、「目を閉じて」と言った。






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