ホルガリズム

彼女とカメラとしっぽ

書いて字の如く、呆気にとられ立ち尽くす僕に気付いた彼女もまた、呆気にとられた顔をした。


お互いの視線が宙を彷徨いそれが再び重なった時、彼女はポツリと呟いた。


「これは・・・・・・無いよねぇ。」


片手にティッシュを掴んだままなんとも情けない顔をしている彼女を見ると、自然と自分の口元がほころぶのが分かった。おかしさが次第にこみ上げてくる。


「うん、無いね。」


笑い声はなんとかかみ殺したものの、揺れる肩まではどうしようもなかった


おかげで僕の返事はしっかりと震えていて、彼女も諦めたように笑いだした。


ミルクを飲み終えた黒猫が、不思議そうに顔を上げた。
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