君をひたすら傷つけて
第二章

転校生

 あれは高校三年の三学期始業式の日だった。


 その日はとても寒い日で鉛色の空からチラチラと粉雪が舞っていた。そんな寒さの中、私は手袋をしていても悴む手をキュッと握って登校していた。吐き出す息は白く空を舞う。そして、バッグを持つ手の悴んで冷たさのあまり痛みさえ感じるほどだった。受験期の学生の鞄の重さはただでさえ手が千切れそうなほど重いのに、この寒さで重さも倍増したのではないかとさえ思うほどだった。


 歩くたびに真っ白な息が零れる。寒い空気に溶ける真っ白な息が一層寒さを助長させる気がした。お気に入りのダッフルコートも保温のためのアンダーウェアーも着ているのにやっぱり寒い。首元のマフラーも気休めでしかない。


 今日は今年一番の寒さを記録するのではないかと、電車の中で見た携帯の天気予報も伝えている。画面を見ながら溜め息を零したけど、それはまだ暖房の効いた電車の中。


 ホームに降り立った瞬間に現実が襲い来る。


 ホームを突き抜ける風はどこまでも冷たく、容赦なく頬を刺す。ピリピリとするような痛みを頬に感じ、少しでもこの場所から早く逃げるようにとホームを歩く。人の波に流されるように歩くのは寒さをしのぐだけでなく温かい。でも、私は流されるように歩くのは苦手だった。


 一瞬だけ寒さが緩んだかと思うと、駅の構内から出るとまた現実が襲い来る。学校までの道は私と同じ制服の子がたくさん並んで歩いている。流れに逆らう勇気もなく私は苦手なのにその流れに身を任せた。


 雪はちらつく位だけど、気温は驚くほど低い。指の冷たさに耐えられず、ポケットに入っているカイロを取り出そうとした。ポケットにはハンカチも入っているから妙に取り出しにくかった。


 その時に後ろから私を呼ぶ声が聞こえた。


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