君をひたすら傷つけて

どこにでもある出会い

 私たちの居た三年生の教室は職員室から一番遠くて距離があるのに高取くんと話しているとあっと言う間についてしまった。私が歩くのが早いわけでも高取くんが早いわけでもない。さっきまで周りにいた生徒たちもみんな講堂に向かって言ったので周りにも誰も居なくなってしまって、長い廊下に私と高取くんだけがいた。


 転校生の高取くんを職員室まで案内したら、私も急いで講堂にいかないといけない。クラスの列の一番後ろになったとしても目立たないように並びたいと思う。出来ればクラスの女の子には気付かれたくなかった。


 職員室は思った通りに人気がないように感じた。きっとほとんどの先生は講堂に行ったのだろう。


 高取くんは職員室のドアをノックして入ろうとするけど、私はどうしようかと躊躇した。私はクラス役員でも何もないただの隣席で案内を頼まれただけ。でも、それをどう先生に説明したらいいのだろう。頭の中で考えていると私の気持ちを察してくれたのか、高取くんはニッコリと安心させるように微笑んだ。


「高取くん。あの、私…」


「少しだけ待ってくれる?兄を紹介してもいい?連れてくるから。ここで待っててくれる?」


「でも、始業式に行かないといけないから急いで」


「うん。ちょっとだから」


 そういうと高取くんは一人で職員室に入っていき、その高取くんを待っていたかのように教頭先生がゆっくりと応接室らしき方に連れて行き、私は職員室のドアの隙間から見える時計を見ていた。


 

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