イケメンすぎてドン引き!
イケメンのキャラ崩壊。
★
「俺、実は中学の頃、オブチさんに憧れてたんです」
「えええ!?」
「ミー先輩に聞きませんでしたか? 俺、水泳部だったんですよ」
立体感のある入道雲が、青空とあたしの間にもくもくと広がっている。
今日はハンドボール部は休みらしい。
誰もいないコートの横にあるベンチで、驚きの事実をあたしは知ることとなった。
雲から抜け出した太陽が、土のコートをじりじりと焼いていく。
「テニス部って良い噂聞かなかったんですが、その中でオブチさんがすごい部活頑張ってて、久々に地区大会突破してたじゃないですか」
「いやいや、それは皆も頑張ってたからで……」
「俺、よくプールからオブチさんのこと見てたんです。練習も一生懸命で、メンバーにも声かけてて。
でもあの頃はヒロキさんがオブチさんを好きっぽかったから俺、何もできなくて」
え。
何言ってるの?
単語の1つ1つは理解できるけど、頭が文章を飲みこんでくれない。
でも、今からどんなことを言われるか、何となく察知してしまった。
突然、かーっと顔が熱くなってしまう。
「ちょ、あの、待って。頭の中がごちゃごちゃで! わーー! ごめんね!」
まだ何も言われてないのに、超テンパってしまうあたし。
やば、絶対変な人だって思われる! てかもう思われてる? 嫌だー!
しかし――
「あははは! あ、笑っちゃってすみません。オブチさんやっぱり面白いです」
あたしにかわまず、隣にいる日に焼けた短髪の男の子――ノリ坊は可愛らしい笑顔になっていた。
普段はちょっと怖そうな目が線のように細くなっていて。
口を大きく広げないようにして笑うのがくせなのか、はにかんだ感じの笑い顔になる。
「う……」
目と目の間にしわがよっているだろうあたし。
恐る恐るノリ坊を見上げると、彼は唇をもごもごしながら表情を整えて。
そして。
「俺、吉野先輩みたいにイケメンでもないし、何でもできるわけじゃないけど、オブチさんのこと……」