あなたと恋の始め方①

大事にしたい気持ち

 折戸さんが綺麗な笑顔を残して行ってしまうと妙に自分の部屋が寂しく感じると同時に肩の力が抜ける。今日は何と言う日だろう。いつもは殺風景な私の部屋に折戸さんは華やかさを足し、小林さんが爽やかさを醸し出した。でも、その二人の存在感は圧倒的で私は自分の部屋にいるのに妙に疲れてしまってた。


 折戸さんを送っていくということで小林さんも折戸さんと一緒に行ってしまった今も、胸に手を当てると、心臓がドキドキしている。それくらいに折戸さんの言葉は強烈過ぎた。


「あんまり吃驚しすぎて可笑しくなりそう。」


 そんな私の呟きが緊張の緩んだ空気に溶けていく。私はリビングに戻ると、ソファに座り、クッションを抱きしめ、顔を埋める。頭の中に折戸さんの言葉がクルクル回る。


 フランスからの突撃訪問にいきなりのプロポーズ。こんな状況に吃驚しない方が可笑しい。


 精神的疲労は肉体的に疲労すると実感した。


 でも、一緒に時間を過ごしたから分かるけど折戸さんの言葉は本物だった。私に対する言葉に偽りはない。考えてみれば折戸さんはいつも私に対しての言葉は真っ直ぐ。


 前も、そして今日も。


 少し私が楽になるように言ってくれていたけど、言葉は軽めに言ってくれたけど、折戸さんの気持ちは本当だと思う。だからこそ私はその気持ちに誠意をもって応えないといけないと思う。


 折戸さんが私のどこを好きになってくれたのか分からないけど、好かれているという気持ちが伝わってくる。


 それは鈍感な私でも分かるように『言葉』を伝えてくれるから。

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