I'm crazy about you.



「おい、どうした?」

近づいてきた先輩の克哉さんが、立ち尽くしている俺に声を掛けて、更には俺の視線を探る。



「何?あーいう子好み?っていうか、知り合い?」
「どっちにもハイ、ッス」
「あ?」
「つーか、彼女、なんですけどね」
「へぇ。なるほどね」
「なんすか?」
「いや、お前さ、あんま女の話しないし。うちの会社でお前に言い寄ってる女って派手なの多いからなぁ…あーいうタイプが好みじゃ、なびかねぇ訳だよなぁ」

別にあーいうタイプが好みって訳じゃないけど、あえて彼女が好みなんだ、なんて言う必要もないだろうと黙っていると、克哉さんは俺の肩を意味深に叩く。
そのまま視線を向けると、ニカッと笑みを向けられた。




「気になるかもしれねぇけど今は仕事だ。戻るぞ」
「はい」

個室へ戻る克哉さんの後に続きながら、俺はもう一度七海を振り返った。





別に食事をしているだけだ。
そう自分に言い聞かす。



目の前の男がすげぇ優しく笑顔を向けるのを見て、俺は足早にその場を立ち去った。



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