I'm crazy about you.


連れて行ってくれたお店はゲストハウスみたいな、ちょっと高級そうな雰囲気。
落とした照明が外観を引き立てていて、ほぅ、と溜息を吐いた。



「どした?」
「ねぇ瀬川さん、ここ誰と来たの?彼女でしょ?…イタッ」

からかうようにニッ、と笑うと額に走る小さな痛み。
それは瀬川さんにデコピンをされたからだって気付いた。



「何するんですかー」
「七海が馬鹿な事言ってるからだろ」
「だって、こんな素敵な所他に誰と来るんです?」

私がそう言って顔を覗き込めば、ニィ、と笑い返された。



「お前と来てるじゃん」
「それはそうですけど!」

ムキになる私に笑いながら、お店の中へ。




「瀬川です」

突然名乗る瀬川さんに驚くと、お店の人が、承っております、と小さくお辞儀。
ご案内致します、と言うのに着いて行きながら瀬川さんを見上げた。


エスコートするようにそっと背中に添えた手を押されて、近づいてきた口許がお前がトイレに行った隙に予約したんだよ、って教えてくれた。


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