「――すごかったわねぇ、昨日は」

感心してるのか、呆れているのか、そう呟くのは理沙。
ランチをする人達で賑わうイタリアンレストランのテーブルの向かいで丸くした目を私に寄越す。

「…すごいって、何が?」
「なんか怒ってる?」


昨日の夜、理沙は電話をかけてきたけど、私の話だけ聞いて詳しいことは明日って切ってしまって。
ふわふわともやもやが混じる気分のまま、レポートもやらずに寝てしまった私は、目が覚めてみればあまりにも変わらないリアルな現実に、昨日のことはすべて夢だったんじゃないかと思いたくなっていた。


――GLANC・グランというテーマパークのアトラクション。

そう思えば、信じられなくても別に構わないわけだし、すごかったね、で終わらせて今までと変わらない日々を過ごせるだろう。
なのに、
スマホにはちゃんと藤堂さんの番号が入ってるし、こうして理沙や博人さんともランチに来てる。


「…美智子?」
「………」
「どうしたの?…もしかして昨日のこと思い出してた?藤堂さんの事とか」
「……」

ニヤニヤする理沙に、無性に腹が立ってくる。

「何で止めてくれなかったの?」
「止めて欲しかったの?」
「はあっ?だって、会ったばかりの人に送ってもらうなんて……」
「いいじゃない。相手は藤堂さんだし」
「そういうことじゃないでしょ?」
「でも、家までちゃんと送ってもらったんだからいいじゃない」
「……理沙」

正面から、理沙のきれいな顔を思い切り睨んだ。

「――はいはい、わかったわよ。…頼まれたのよ、美智子を店に連れて来てくれって」
「頼まれた?――いったい誰に?」
「――俺だよ」
「えっ!?」
「遅いわよ、博人」


陽の光に美しく輝く、緩やかな曲線を描く髪。
均整のとれた身体に、ピッタリとした白のカットソーにダメージジーンズ。

まるで雑誌から抜け出たモデルのような博人さんのあまりの美しさに周りのお客さんもうっとりと見惚れている。


「ごめん、ここのマネージャーと話してた」

昨日足を痛めた私を今日は車でわざわざ迎えに来てくれた博人さんは、ここにきてすぐに用事があるからと席を外していた。
いろいろと忙しいんだよね、と理沙の隣に座ると、私の表情に気付いた。

「あれ?なんか怒ってる?」
「…はあ」

少しだけ不思議そうだった博人さんの表情が、いたずらをした少年のように変わった。


「あのね、俺が理沙に美智子ちゃんを店に連れてきてって頼んだんだ」



この作品のキーワード
激甘  溺愛  俺様  社長  イケメン  大学生  甘々 

感想ノートに書き込むためには会員登録及びログインが必要です。