「……」

うっすら目を開けたら朝になっているらしくあたりが明るい。


「んー」

体を起こすと頭はクラクラするけど痛くはなくて。
自分の格好を見るとちゃんとパジャマを着ている。


……パジャマいつ…


不思議に思っていると寝室のドアが開いた。


「あ、目が覚めた?」
「…理沙」
「話は後ね。…のど乾いたでしょ、これ飲んで。――熱も計ろう」
「――ん」


――…理沙が…

理沙がうちにいることが何だかとってもホッとした。


「う~ん、まだあるね、熱」
「ん…」

思っていたよりも熱は下がっていなくて、薬を飲んで、また横になる。


――…藤堂さんは、あの後どうしたんだろう…。

ぼんやりとする頭で考えては見たものの、すぐにまた意識が遠くなっていく。


次に目が覚めた時はもう夜で。
ゆっくり寝たおかげか熱は平熱に戻っていて、身体も軽くなっていた。

「何か食べてみる?」
「ん」

ベッドの上に起き上がると、理沙がおかゆを持ってきてくれた。
ほっこりと安心するおいしさが身体だけじゃなく心にも染みてゆくようで。
食べ終わる頃には、自分の気持ちも数日ぶりに落ち着いているように感じていた。


「――どうして私が具合悪いってわかったの?」

訊いたのは、なんとなくだけど答えがわかってること。でも私の想像じゃなく、理沙の口から実際のことを聞きたかった。


「博人が知らせてくれたの」

博人さんが?


「藤堂さんから連絡があったって。――ふふっ、博人ものすごく焦ってた」
「……どうしよう。この間、走って逃げちゃったし」

そこで初めて、あの雨の日博人さんを置いていってしまったことに気付いた。


「大丈夫よ。博人にも責任があるんだから」
「責任?」
「そもそも、博人の行き過ぎた好奇心がいけないのよ」
「………でも」
「もう気にしないの」
「…ん。――理沙も仕事休ませてごめんね」
「ああ、それなら平気。こっちも博人がうまくやってくれるから。……まあ、藤堂さんがらみだしね」
「どうやって?…お店違うのに」
「ん?――ああ、博人はね、GLANC・グランや私がいる店、あといくつかの店の責任者なの」
「責任者?…店長とは違うの?」
「店長より上の統括してる立場っていうのかしら。――資金的なことは藤堂さんが、実際に店を動かしてるのは博人なの。だから私の休みぐらい調整するのはお手のものってとこね」
「……」

ナンバーワンホストというだけでもすごいのに、統括する責任者なんて。
目を丸くする私に、驚くのはこれからよと理沙が笑う。


「博人の話では、いくら電話しても出ない美智子に、藤堂さんが仕事を途中で放り出して出て行ったって」
「ええっ?!」
「あの仕事の鬼が放り出していくこと自体驚きなんだけど、博人がもっと驚いてたのはね、藤堂さんが美智子のスマホの番号を知ってたことなの」


――…だって、藤堂さん本人が番号を教えろって。


「藤堂さんは女の番号なんて今までまったく入れたことがなかったんだって。会社関係は全て秘書を通してだし、プライベートでも全くなかったらしいのよ。博人が言うには連絡してくるのは全て女から。しかも1回のみで次の電話は着信拒否だって」
「…」


藤堂さんが、自分からは女の人とは付き合わないって言うのは聞いたけど、まさかそこまでとは思っていなかった。


「それが、美智子の番号はしっかり入ってるわけじゃない。そりゃ博人も驚くわよ」
「……」
「藤堂さんってね、本当に女には冷たいの。それが美智子には全然違うんだもの。昨日もすごく心配そうで、あんな顔の藤堂さん初めて見た」

びっくりしたままの私に理沙が優しく微笑む。


でも、私の頭に浮かぶのは、


――…キスした女の人に向けた、氷のように冷たい視線。


藤堂さんは女なら、誰にでもあんな眼をするんだろうか。


「……」
「…きっと、美智子のこと、すごく大切に思ってるよ」

理沙は俯く私に、そっと呟いた。


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