「――美智子ちゃんは付き合ってる人いる?」
「は?」

私をジッと見つめるのは好奇心いっぱいの鳶色の瞳。

「好きな人とか」
「えっ?」
「美智子は今、フリーよね」
「ちょっ、理沙っ」
「なら、俺はどう?」
「へっ?」

突然おかしなことを言いだして美しい笑顔をこちらに向ける王子様に首を傾げるしかない私。

「博人、美智子をからかわないでよ」
「からかってなんかないよ――ね、俺じゃダメ?」

覗き込む彫刻みたいなきれいな顔に、

「…えっ、あの、それってどういう――」

胸がドキッと飛び跳ねる。


「今度ご飯でも食べに行こうよ、ね?」
「――私とですか?」
「ちょっと、博人!今度は何?」
「何って、ごはん」
「だから、何で博人が…。それにそんな暇、博人にないじゃない!」
「時間ならいくらでもつくるよ。美智子ちゃんと行けるなら」
「会ったばかりで誘うなんてどこの二流ホスト?」

理沙のイヤミもどきな言葉に「イイよ何でも、この際」と笑う博人さん。
その表情にはわざとらしさやウソっぽさは全然ないけれど。

――でも、

「……あの、それは」
「――やっぱり、俺じゃダメ?」

今度は鳶色の瞳が悲しげに曇る。


「え?―…いや、ダメとかじゃなくて……」

ほとんど話らしい話もしてないのに、王子様みたいなナンバーワンホストと二人でごはんを食べに行くなんて想像すらできなくて。

「――どうして私と?」

出たのは素朴な疑問。

「んー、かわいいからかな」
「はぁぁっ?」

王子様の答えの有り得なさに、出たのは自分でも驚くほど間抜けな声で。

――これは絶対にからかわれてる!

この場を盛り上げるためのセールストークってやつに違いない。


「博人~!」
「理沙からも美智子ちゃんに頼んでよ」
「博人のお願いならもう聞いたでしょ?」
「じゃ、あとひとつプラスして、ね?」

呆れる理沙にも全く引く気配を見せない博人さん。

……う~ん。

ただでさえこんな高級ホストクラブに連れて来られて戸惑っているのに、幾らセールストークとはいえ、しかもナンバーワンから誘われるなんて冗談にしてもちょっとおかしい気がする。


「あ~っ、もう、わかったわよ。――美智子、ご飯食べに行くわよ。博人がご馳走してくれるって」

いきなり理沙の気分が変わったらしく状況は一転。

「はい…?」
「ね?」

おそるおそる博人さんを見れば、きれいな顔には満足そうな笑みが浮かんでいて。

「……ホントに?」
「ん、理沙と一緒に3人ならいいでしょ?イタリアンのおいしいお店があるんだ」
「おいしくなかったら、怒るわよ」
「……」

私抜きで決定事項になってる話に唖然としつつも、漂うのは自分が何を言ってもダメそうな空気。
会員制高級ホストクラブのナンバーワンがお金持ちでも美人でもない大学生を誘う理由が全くわからないけれど。


――…こんなのきっと、今日だけだし。

今日はきっと「そういう日」なのだということにして、

「……わかりました。行きます」

博人さんへ頷いた。

「ありがとう、嬉しいよ」

――うわぁ…

博人さんは長い睫毛を伏せながらお礼を言ってるだけなのに、見てる私はドキドキで。
こんな人が世の中に存在するコトに感心してしまう。



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