嘘つきな背中に噛み痕をアゲル。
四、蓋を開けると。

母親の入院が、こうも仕事にまで響いてくるとは思わなかった。


「ごめん。晴を一旦保育園に迎えに行って、お義母さんに渡してまた戻って来ていい?」

幹太とおじさんとおばさんに、両手を合わせて、ぺこぺこと頭を下げた。
本当に、今、この春月堂は忙しいから、私がそんなにちょくちょく抜けたら大変なことは分かっている。

けど、お義母さんは、同年代の主婦友とお料理教室を開催していて、週に二回、公民階の部屋を借りて楽しんでいる。迎えに行く暇はないし。

「うちの親の足が治るまでだから」
「いいのよ。いいの。気にしないで頂戴ね。保育園にも相談しときなさいよ」
おばさんが、にっこりと笑う。
本当はそんなに笑って見送ってられない状況なのに。
「うん。今日説明に行く。あのオカマに会うのは気が進まないけど」
げんなりと溜息が出てしまうと、おじさんがケラケラと笑った。

「あそこのクソガキが、バイクのレーサーになったかと思うと次はオカマか。本当に破天荒な奴じゃな。昔から変わっていたけど」
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